今回の文献はEfficacy of pneumococcal vaccination in children younger than 24 months: a meta-analysis. Pavia M, Bianco A, Nobile CG, Marinelli P, Angelillo IF.Pediatrics. 2009 Jun;123(6):e1103-10.です。
1妥当か
・メタアナリシスの課題は明確か?
PECOは?
P 月齢24か月未満の乳幼児
E 肺炎球菌結合型ワクチン(7価,9価,11価)を接種
(月齢12カ月未満で3回もしくは4回の初回免疫接種)
C プラセボを接種、または他のワクチンを接種
O 侵襲性の肺炎球菌感染症(細菌性髄膜炎,菌血症,血液培養陽性の肺炎)、急性中耳炎、肺炎
Primary Outcomeは的確か?
的確である
・情報収集は系統的で網羅的か?
検索方法は?
論文検索は2000年1月から2008年の6月までの出版物から電子データベース(MedlineとEmbaseを用いて行った。未検出の論文を見つけるため電子データベースで検出された臨床試験や総説に関連する論文について手動の検索も行った。
英語論文以外は?非出版物は?英語論文のみに限られている
手動の検索を行ったとあるが非出版物まで検索を行ったかどうかは不明である・論文の採用基準、評価方法は適切か?
論文の採用基準はRCT(ランダム化比較試験)か? ITT(Intention To Treat)解析か?
採用論文はRCTである。Intention To Treat解析またはPer Protcol解析である
Reviewerは独立しているか?
2人のReviewerが独立してそれぞれの論文の質を評価しA jadad et al Scoreで評価している。最終的には2のReviewerがお互いの評価について話し合い、各々で評価に違いがあったものについては2人の総意を以てScoreを修正している。評価の段階では選択バイアスを防ぐため論文を除外することは避けた。2何か
IPD(InvasivePneumonia Disease)については7価のワクチンを打った場合、7価によるものはRR:0.11,NNT:395、全ての血清型によるものではRR:0.26,NNT:379であった。95%信頼区間で考えると効果がない時でも7価によるものは73%イベントが減り、全ての血清型によるものでは54%イベントが減る。相対指標および絶対指標とも非常に有効な値であるしIPDによる高い死亡率を踏まえるとさらにその有効性が高く評価できる。
Otitisについては7価のワクチンを打った場合、7価によるものはRR:0.45,NNT:1799、全ての血清型によるものではRR:0.71、NNT:7であった。しかし全ての血清型に関してはPP解析のデータしかなく接種群とコントロール群の母集団数に差がありすぎてるので信頼性に足るものかどうかは疑問である。Otitisに関する全てのエピソード(実際には耳痛、熱発、耳漏などのエピソードで受診するわけだからこちらの方が臨床的には重要だろう)ではITT解析のデータがあるがRR:0.94で95%信頼区間で考えると最も効果がある場合で9%イベントを減らし、悪い場合だと4%しかイベントを減らさない。つまり7価のOtitisに関しては少しばかりは効果があるが、全ての血清型に対する効果は不明でありOtitisのエピソードに関しては効果若干はあるものの極少ないものと解釈していいだろう。Pneumoniaに関しては7価と9価がごちゃ混ぜになった結果しかないのでごちゃ混ぜバイアスが入っている。ITT解析のデータがありRR:0.94,NNT:391とNNTに関してはワクチンとしてはそこそこ良好な値であるが、イベントをそのもの自体は大して減らさず95%信頼区間で考えると効果がない場合では2%イベントが減るのみである。Pneumoniaに関してはOtitisよりも更に少ない効果であると評価して良いだろう。
3役立つか
IPDに関してはその高い死亡率(WHO統計では全世界で100万人の乳幼児が死亡)などからしてもPCV-7は有効であると考えられる。日本での原価を約8000円として合計4回で32000円でこの効果ならコスト的にも良いと思われる。
Otitisに関しては7価のものでは若干の効果があり(論文中ではmodestと書いてある)、Pneumoniaに関してはOtitisよりも更に僅かな効果であると評価していいだろう。原著論文の結末ではOtitisとPneumoniaとも効果はさほどではないが乳幼児がこれらに罹患した場合の負担を考えると、実は潜在的に大きな意味があるのではないかと締めくくっている。あとは副反応だがこの論文中には副反応についての記載は含まれていない、日本国内における臨床試験では局所発赤などの副反応は多くみられたがアナフィラキシーなどの死亡に直結するようなものは認められていない(海外では報告あり)。
結論としてはコスト面や副反応やを踏まえてもIPDをここまで減らしてくれるのであればPCV-7を乳幼児に接種するメリットはかなり大きいと思われる。
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