2010年4月27日火曜日

曖昧なこと

こんばんわ!
今日は当直中の書き込みです。本日の再診外来での出来事です。外来診察中に看護助手さんがカルテに私の名前の書いた棒を挟んで持ってきました。「先生希望の患者さんですのでよろしくお願いします。」と看護助手さんにいわれました。
「んっんんん?」
「ちょっと待てよ?今日は再診なのに初診出来た患者が私を希望すれば私が見なきゃならいのだろうか」と思いカルテチェックをしました。過去に私の外来を予約したとか入院中に主治医になったとかそういうことは全然記録に有りません。風邪で数度見たくらいで今回も風邪のあとのいわゆるPost Infection Coughのようです。
思わず「いや、私は診ません」と即答してしまいました。結局、初診外来にはカルテは回らず以前に風邪で診察した私の上司の先生が診る羽目になってしまいました。
なんだか外来を予約しているわけでもないし初診で来て、しかも初診外来で診察に出ていない先生を指名する患者さんの言い分を受け入れている状況が非常に曖昧な感じがしました。
私の再診外来には仕事をお休みしたり、日程をずらしたりして来てくれている人が結構いますのでそういう患者さんの顔を思い浮かべると簡単に「いいですよ!私が見ます」なんて言えませんでした。残念なのはそういう患者さんが結局はどの先生の再診枠にも予約をとらず好きな時に来て好きな時に診てもらっている状況を許容することが本当に患者さんにとっても病院にとっても実はあまりいい方向には向いていということです。結局一度そういうことが許容されると毎回毎回初診出来て先生を指名する受診形態をとるわけですよね。慢性疾患のコントロールの場合はコントロールができない状況に陥りやすい状態です。
初診、再診にかかわらず「いいよ!いいよ!」と診てくれる病院、先生は患者さんにとっては良い先生かもしれませんが、本当にいい医療を提供出来ているかは不明です。病院に来なくなるよりはそんな形でも外来を受診してくれたほうがいい。でも患者さんが外来受診日を守る努力をすること(特に予約をした場合ならなおさら)は病気を管理するうえでは重要なことですし、予約をしてないのであれば毎回違う医師が診療に当たるというリスクを受け入れてもらうことも重要なことです。○○先生に診てほしいとごねた人が勝ちになってしまうなんてルールを守っている患者さんに失礼になっていしまいます。
曖昧にやっていくことで救われる部分も医師側にはたくさんあります。診断がつかない時、病状がうまく良くならない時に「年だからしょうがないよね先生・・・」「先生がやれるだけやってくれるんだしこれ以上難しい治療や検査をするのはもういいです・・・」なんて曖昧に済ませてくれる患者さんの家族がいて、そんな時はその曖昧さに救われているんだなあと思います。
どっちがいいかはこれだけでは言及できませんが非常に印象に残る出来事でした。曖昧さに困惑する医師、曖昧さに救われる医師、常に矛盾をはらんだ現場が地域医療なのかもしれません。

2010年4月25日日曜日

北国の春

今日は当直明けで妻と近所にドライブへ行きました。私の住む場所にもとうとう桜がちらほらと咲くようになってきたので桜を見に行ってみましたがまだ満開とまではいかないようです。
ちょいとばかし足を延ばし、私の住む町から少しばかり標高の低い隣町へ行くと桜がきれいに咲いているじゃないですか!
数週間前まではスキー客でにぎわっていたスキー場の真横の道に桜並木があり綺麗に色づいています。
雪が少し残っている地面や遠くに見える雪のかぶった山と桜が対称的で美しいですね。関東にいたころには雪と桜を同時に見るなんて思ってもいませんでしたのでとても幻想的でした。
あと地面にはあちらこちらにフキノトウがありました。こちらのスーパーではフキノトウが山程うっているのですが地元の人からしたらあちらこちらに生えているので、とくに珍しいものでもないんでしょうね。
フキノトウのてんぷら、○○円なんて書いてお店で売ってますが、実はほぼ原価はただというのを考えると少し残念な感じです。

2010年4月23日金曜日

学生さんの実習が終了

札幌医科大学から当院に実習に来ていた学生さんの実習が昨日で終わりました。こちらは医師6年目で学生さんに色々と指導する立場(?)を期待されていたのですが、学生さんの質問でこちらが逆に勉強することが多かったです。
学生の視点からの現場の捉え方や自分も疑問に思っていたのに忘れかけていた新鮮な質問は本当にありがたいですね。
今後も学生さんが来てくれるとこちらも元気が出て仕事も楽しくなり相乗効果が期待できそうです。
来週からは学生もジュニアの研修医もおらず少し寂しい状況です。常勤医師も1人減で連休の当直も大変そうですが自分なりに頑張っていこうと思います。

PS:当院がある甲信越地域も桜がとうとう咲きました!春ですね~
  そのうち桜の写真upします

2010年4月19日月曜日

お久しぶりDKA!

久しぶりにDKAの患者が運び込まれてきましたが管理方法がほとんどすっ飛んでいました
ということでDKAの輸液管理についてまとめました

輸液
開始時(下記を血漿グルコースが<250mg/dlになるまで継続する)
・生理食塩水を1L/hr(15-20ml/kg/hr)で投与

・輸液負荷をどうするか決める

軽い低血圧で血清Naが正常の場合
→0.45%塩化ナトリウムを200-700ml/h(4-14ml/kg/hr)で投与
軽い低血圧で血清Naが低い場合
→通常の生理食塩水を200-700ml/hr(4-14ml/kg/hr)で投与
Hypovolemicショックの場合
→生食もしくは膠質浸透液を1L/hrで投与
Cardiacショックの場合
→血行動態を把握するためにスワンガンズカテなどでモニタリング

・一度、血漿グルコース≦250mg/dlになった場合
0.45%の塩化ナトリウム、5%ブドウ糖液に変更し150-250ml/hrで投与
(0.45%塩化ナトリウム500ml+50%ブドウ糖液50ml⇒大体3号輸液+50%ブドウ糖液40ml)
安定するまで血漿グルコースを2-4hr毎にチェック


・ボーラスで0.15U/kg(50kgで7.5U)を経静脈投与
・その後は0.1U/kg/hr(5-7U/hr)で持続静注
・血漿グルコースが50-70mg/dl/hrで低下しない場合は持続静注速度を2倍に変更
・血漿グルコース≦250mg/dlになるまで継続投与、その後は1-2U/hrで投与

電解質(主にカリウム)

・K<3.3mEq/Lの場合
インスリンを継続しつつ40mEq/hrの速度でK≧3.3mEqになるまで補正

・3.3 mEq/L≦K<5. 0 mEq/Lの場合
インスリンを継続しつつ20-30mEq/LでKを投与
血漿Kを4-5mEq/Lに維持する

・K≦5 mEq/Lの場合
Kを投与しない
2hr毎に血漿Kをチェック

※ハーフソディウムはT3、ハーフソディウムと5%ブドウ糖混合液はT3Gでほぼ代用出来そうです

2010年4月17日土曜日

脂漏性皮膚炎は検査が必要か?

今日の外来での出来事です。診断名、湿疹でずっとステロイドを出されていた患者さんが来ました。主治医は決まっておらず薬が無くなるたびに初診外来にひょっこりと顔を出していつもの塗り薬といつもの血圧の薬をくださいといって薬のみもらいにくる田舎の診療所に有りがちのタイプの人です。

診察室に入るなり「いつもの薬を・・・」といっていましたが以前に私が見たときと一目瞭然で違うところがありました。顔の皮疹が以前はなかったような気がしましたが今回は顔が赤くなっています。

う~ん、鼻梁をまたいでいるけど紅斑というには辺縁が明瞭ではないしSLEの好発年齢でもない。よくよく見ると額、特に眉間や鼻から口へかけての皺のちょうどある辺りが赤くなっています。
ステロイドを塗ると良くなるからステロイドをくれと言いますが、良くなっては悪くなりなんだかひと癖ありそうな感じです。

実はこれって脂漏部位に一致して皮疹があるんじゃないだろうかと思い頭皮を診察、すると頭皮は落屑がたくさんあります。ぬぬ!これは脂漏性皮膚炎だ!ということで抗真菌薬を処方しました。

すると陪席していた学生さんが「先生は油を餌にしてカビの仲間が増えるっていいますけど真菌の検鏡はしなくていいんですか?」と質問をしてきました。

確かにカビなのに検鏡しないのはおかしいなあ、水虫のときはしているのに脂漏性皮膚炎はしないのかというのは鋭い質問ですね。

・・・ということで調べごとです。Dynamedで「seborrheic dermatitis」という言葉で検索するとDiagnosisの項目にこうありました。
・clinical diagnosis
・usually no testing needed
・HIV testing should be considered in patients with severe generalized seborrheic dermatitis

訳すると
・臨床的に診断しなさい
・テストは不要
・シビアな場合はHIVのチェックをしなさい
ということでした。

(頭部の場合)
軽症の場合、フケ用のシャンプー(Zn入りまたはコールタール入り)
中等症から重症の場合は抗真菌薬入りのシャンプー
重症の場合は抗真菌薬の塗り薬に加えてステロイドの塗り薬を使用
(頭部以外の場合)
イミダゾールのクリーム
早く治すためにはイミダゾールに加えてステロイド(Mild)の塗り薬
14日以内にステロイドの塗り薬をやめて、その後は治るまでイミダゾールを続ける

今回の答えとしては、検鏡はいらないということがわかりました。
治療としては顔面に関してはMildのステロイドを14日以内で追加して使用したほうが良かったかもしれませんね

明日学生に教えてあげることにしました。
ちょっとは指導医らしく株が上がるでしょうか?

2010年4月15日木曜日

子供手当は子供の将来のため?②

さて前回の投稿に引き続き、ここからが本題です。ちょっとばかり医者っぽいこと話しちゃいます。将来の子供のために貯金すると言いますが、それだけで将来は本当に大丈夫ですか?自分ながら本当に怖いことを言ってしまいました、、、スイマセン。


分かりやすく例え話をします。老後はゆっくりと隠居暮らしするために昼夜を問わず一生懸命働いて、働いて、、、いざ退職してみたら病気をして隠居生活が闘病生活になってしまったなんてことよく聞きますね。実は将来を考えるためには今の健康のために検診を毎年受けたり人間ドックを自分で受けたりという投資が必要なわけです。お子様についても同じことが言えるんじゃないでしょうか?将来子供たちが大きくなって無事に過ごすには病気という多くの矢玉の間を掻い潜っていく必要があるのです。そのために必要なものが予防接種だったりするわけですね。

ということで、今回は私の勤務する病院で新しく始める予防接種を紹介します。乳幼児用の肺炎球菌ワクチン(商品名:プレベナー®)を今年度から始めることになりました。肺炎球菌によって引き起こされる疾患として代表的なものに菌血症/敗血症、髄膜炎、細菌性肺炎、中耳炎があります。WHO(世界保健機関)の統計では世界では肺炎球菌感染症により毎年約100万人の乳幼児が死亡しているという報告があります。しかし近年、肺炎球菌感染症はワクチンで予防可能な疾患の代表的なものとして考えられるようになりました。特に、肺炎球菌によって引き起こされる髄膜炎は、ほかの菌の場合と比べ重症化する場合が多く、40%以上が予後不良であることが報告されています。2000年より肺炎球菌ワクチンを小児期の定期接種ワクチンとして導入した米国では、導入前と比較し、肺炎球菌による髄膜炎、菌血症の発症が94%減少したことが既に確認されています。

接種の方法は、初回は2カ月齢以上7カ月齢未満で開始し、27日間以上の間隔で3回接種します。追加免疫は通常、12~15カ月齢の間に1回接種します。つまり合計4回の接種になります。 1回に8500円(私の勤務する病院ではこの位の額で行いますが全国的に見ても格安の値段です。)だとすると合計4回の場合でも最大で3万4千円です。年間15万6千円の子供手当の約1/5の出費で肺炎球菌による髄膜炎、菌血症の発症が94%減少するわけです。残りの4/5を貯金に出来て肺炎球菌による感染症から子供を守れたら素晴らしいことだと思いませんか?

なんだか製薬会社の請負みたいな感じになってしまいましたが肺炎球菌ワクチン、個人的にはお勧めです。

子供手当は子供の将来のため?①

ところで今日は医療とはあまり関係なさそうな話になりますが子供手当のお話をしてみようと思います。
子供手当とは言いますが皆さんどんな制度か知っていますか?正式名称は「平成22年度における子ども手当の支給に関する法律」といいます。簡単に制度の内容を説明すると15歳の4月1日の前日まで子どもの保護者に毎月2万6千円を支給するという制度です。ただし、初年度(2010年度)のみ月額で1万3千円となるということです。

今年は初年度ですから月額1万3千円ですが、年間に直してみると1人の子供あたり15万6千円の収入になります。何だか夢のような話ですねぇ。

でも、ちょっと待ってくださいね。お金は空から降ってくるわけでもないしそんな都合のいい話はないんじゃないかと思ったそこのあなた、正解です。年間にすると初年度で2兆2500億円、翌年からは倍の4兆5000億円ほど予算が必要になるわけですよね。それってどこから来るんでしょうか?

扶養控除と配偶者控除の廃止で浮いた予算を充てたり、補正予算の子育て応援特別手当を停止して浮いた予算を投入しても結局のところ2兆2500億円には到底足りません。結局「んじゃあ、いつものツケで宜しく」ということで赤字国債になるわけですね。

賢明な皆さんはご存知かと思われますが、ツケといっても何かを後回しにするとそのツケは必ずやってくるものなんです。夏休みの宿題、後回しにしたら結局夏休みの最後の日に徹夜をする羽目になったのを思い出しますねぇ。大体私はそういうタイプでした。「子供手当は子供名義の借金つけ回し政策だ」と偉い(?)政治家さんは言いました。「そう言っちゃうか、それ言われちゃうとな~」って胸にグサッと来たお父さんお母さん方がいっぱいいるんじゃないでしょうか?

いや、そんな事はない。子供手当は「子供の将来のために積み立てや貯金をしようと考えている」というお父さんお母さん、そんなあなたは本当に偉いと思います。実際は世の中の53%の方々が貯金するということを考えているようです。

でもね、貯金されてしまっては政府の考える景気対策には一切ならないんですね、、、残念!
貯金を増やすには景気が良くならなきゃならない、でも景気を良くするには貯金をせずに市場にお金を落とす必要がある。意図したこととは違う方向に事が進んでしまうという意味ではちょっと痛い制度ですね。

世の中、常にダブルバインド、矛盾だらけということでしょうか?
ということで今日はここまでにします。

第2回は本題についてお話します。

2010年4月7日水曜日

舌が黒くなったという人

骨の帝王の原著を読む、、、で投稿して以来の書き込みです。4月に入りちょっと心を入れ替えて投稿です。ところで皆さんは舌が黒くなったという人が受診してきたことって経験がありますか?
実は私は1例だけ経験があるのですが今回はとうとう2例目に遭遇しました。舌が黒くなって一度治ったがまた黒くなったとのことで「悪い病気じゃないか?」と心配になり来院したようです。
外来で混雑していたときだったので横着しちゃいけないと思いつつ、必殺!googoleで検索してみると黒舌症というのがあるじゃないですか!
原因は①抗生剤、長期使用、細菌(Candidaなど)、コーヒー、タバコ、薬品、食品中の着色料②慢性衰弱性疾患③酸化剤、アストリンゼン剤を含むマウスウォッシュの使用④頭頚部の放射線療法があり、基本的治療には原因を除去することが基本のようです。
更に更に、uptodateで調べるとBlack hairy tongueという記載がありました。病理学的には糸状乳頭の過形成が起こって舌が毛状に肥厚し黒色に見えるいるみたいです。原因を除去する以外に舌を柔らかい歯ブラシで1日に2から3回くらい歯磨き粉をつけて舌をブラッシングすることで改善するという記載がありました。(Am Fam Physician 1990;41:1751. Black Hairy Tongue 参考)
今回の症例を通じて黒舌症は実はあんまり心配はいらない病気だということとがわかりました。次回は歯磨き粉をもちいた指導が出来そうです。