2010年5月31日月曜日

ふとした手紙

先日、肺炎の患者さんを入院で担当しました。通常の細菌性肺炎なんですがもともと直腸癌術後、肺転移で右肺を一部切除している方でUFTなどを内服しているという状態の人でした。
私にとっては普通の肺炎の患者だったんですけど、保険の書類と一緒に手紙が届いたんですね。私は記憶にはあまりなかったのですが「その後の生活をどのようにするかが大事!」と私がお話ししたみたいで、癌に向き合う姿勢が変わったというような旨が書いてありました。
きっと癌を抱えているけど癌で死なないで心筋梗塞になって亡くなった方もいるという話や脳梗塞になって亡くなってしまった方もいるという話をしたときだったのかなあ。もしくは侵襲的な治療を繰り返して寝たきりで生活するよりも寝たきりじゃない自由な生活も送ることがある程度は出来るという話だったのかなあ。
自分は何とも思っていないふとした事だったのかもしれませんが相手には大きな意味合いがあったということで非常びっくりしたと同時に、たまにはいいことあるなあとふと感じました。
こんなこと何年振りだろうか・・・。
今日も当直です。毎日いいことがないけどたまにいいことがあると続けていける気がしますね。
あすの朝まで、平和でありますように、、、おやすみなさい。

2010年5月29日土曜日

写真部、第1回活動

病院の福利厚生として私の勤務する病院ではサークル活動というのがあります。
上司の先生の影響を受けて1眼レフを買ってしまい、写真部に入ってしまいました。
先週は、その活動第1回がありました。活動といっても1年間の年間計画を考えた後に呑みに行っただけなんですが、、、写真って本当に楽しいですねぇ。
写真を撮るためには被写体が必要ですからどこかにみんなで遊びに行き交流しつつ写真をとって活動ができるわけです。
飲み会でもみんな写真をパシャパシャ取りつつ交流です。お店ででてきたお寿司の握りをみんなで撮影するという怪しい現象がおこり店の人からは怪しい集団と思われていたかもしれませんが当人たちはまったく関係なしですね。
最近のデジタル1眼カメラはアートフィルターなんてあって白黒に取れたり、セピアに取れたりとかなり進化していて私みたいなへたっぴでもかなり上手に取れるんですね。
今後も下手なりに頑張ってやっていこうと思います。

2010年5月19日水曜日

3か月に1度の振り返り

今日は3カ月に1度の振り返りを職場でやりました。
結論として半年ほど勤務して一通り病院の中で働くにあたり必要になった部分、、、
バイオメディカルについての知識、内視鏡などの技術、地域の医療資源については必要最小限が出来るようになった感じがしました。
一方で診療に余裕が出来ることで患者さんと病院の関係について疑問に感じることなどがいっぱい出てきて実際に診療しつつももやもやしていたり、いらいらして患者さんに優しくできなかったりとマイナス(?)な面に気がつくことができました。
具体的にどんなことが疑問なのかというと、病院に対するアクセスビリティーが良すぎることで地域住民にとってはいい病院になっているが本当に必要な受診かどうかを患者が考えるきっかけを奪っているのではないか、安易なアクセスビリティーが患者自身の抱える健康問題を自分の中で消化する方法を奪っているのではないかということです。
いつでも嫌がらずに患者をみる。専門にこだわらず適切な初療をする。病気だけでなく社会的に病を作り出す環境に介入する。当り前で当り前に出来ないことを、自分が勤めている病院の医師や看護師は当たり前にやっている。自分が今まで勤務してきた都心部の病院のスタッフ(自分も含めて)はやっていなかったことだと思います。
当り前のことを当たり前にするという事はとても大変なことなのに、実は大変なことをやっていても当たり前のことと思われて誰にも評価されないことがあります。むしろもっともっとやってくれと言われたり、、、時にまっとうな医療は余計な検査もしないし薬も使わないので儲かりません。儲からない医療をやったら赤字だと文句を言われてしまうなんてことも結構あります。特に公設民営の管理委託だとそのような傾向は強いのではないでしょうか?
人というものは本当に我儘だと思います。「医療や福祉を充実させろ!」でも「税金は増やすな!」とたくさんの人が主張しますが、その矛盾が紛れもなくそれがこの国の現状なのです。
他人の我儘を自分に置き換えて考えてみると、自分自身についても結局同じだったりもするのかもしれません。「この患者はだめだ!いつもいきなり来て無理な要求ばかりする」とレッテルを貼り真摯に向き合わないで診療している患者がいれば「この患者はしょうがない。ほっといたら本当にダメになってしまう。だってかわいそうだし、、」と親身に話を聞いて診療している患者がいます。どっちの患者も本来はなんらかの健康問題を抱えて受診しているわけなのに気に入る態度かどうか、同情できるかどうかで診療態度を変えているわけだったりするわけですね。結局は己のストライクゾーンに入ってきたかどうかということで大事にされる患者とどうでもいい患者に分かれてしまっているのが現状、、、自分自身、我儘な人間の一人だったんだ、、、と気がついた振り返りでした。

2010年5月18日火曜日

新緑の季節

こんばんは
久しぶりの投稿です
先週の土曜日は久しぶりに妻も自分も休みの日でした
実は我が家、一眼レフカメラを購入したばかり、、、とのことで車でドライブし新緑の山へ
車で40分ほどですぐに県境まで到着、利根川の上流の某温泉郷へ付きました
川沿いの道の駅で車をおりそこから数十分で回れるウォーキングコースへ、、、
カメラの設定や構図など、よく分かりませんのでカメラのAut Modeに従うのみでしたが景色が良かったのかカメラが良かったのかびっくりするほど綺麗な写真が撮れました
今までふつうのデジカメで撮影していたので、今の一眼レフの性能にびっくりです
今後も綺麗な写真が取れたらたまにアップしてみますね
では、、、

2010年5月11日火曜日

白癬菌の顕微鏡写真

こんばんわ!今日は水虫の患者が来ました。
「いや~先生、皮がむけて乾燥するとひび割れてあかぎれでかかとが痛いのよ」ということで診察してみるとひびはもうなくなっているけれども、、、爪白癬ががっつりです。
いやいやあかぎれじゃないって、、、たぶんこりゃ水虫でしょ、、、と思いつつ「あかぎれかもしれませんが水虫の可能性もありますので皮膚を顕微鏡でみてみますけど数分時間をもらっていいですか?」と聞いてみると待ってくれるとのことでした。この患者さん、一度こうだと決めたらなかなか解釈モデルを曲げず当院の医師が苦労してきただけに珍しく素直です。「あんたこりゃ水虫だよ」と言わなかったのが良かったのかもしれません。最初は爪すら靴下で隠して見せてくれなかったので本当にラッキーです。
ということで顕微鏡で除いてみると、、、いるいるカビだらけです。あまりにも綺麗で教科書みたいでしたので検体を残しておいて写真を撮影しました。
インターネットで検索してもなかなかいい写真が出ないので自分のブログにアップすることにしました。100倍だとスジが縦横無尽にはしっており何かでスクラッチしたように見えます。400倍になると菌糸や胞子が見えるようになります。白癬菌といえども自分で綺麗に撮影して予想よりもいい絵が取れると愛着がわきますねぇ、、、変な感じです。

2010年5月10日月曜日

病院広報の効果

以前、ブログにプレべナーの事を「子供手当は子供のために?」という内容で載せましたがその絡みで驚かされることがありました。実はあの内容をほぼそっくりそのまま病院の広報に載せたんです。
今日の外来に来た患者さん、「風邪症状が・・・」という感じのふつうの患者さんが入るなり広報を持ってきて「この原稿のこの部分は一体どういう意味ですか?」と質問をしてくるじゃないですか!
実は内容というよりも商標登録のマークでRを○で囲んだマークがありますよね。商品名の右肩あたりに小さく付いていると思いますがあれがどうやら気になったみたいなんですね。なんで気になるのかって聞いてみたら実は患者さん、手話の先生らしくて手話でマルアールを伝えるすべがなかったので困ったとのことでした。
質問の内容はワクチン自体についての内容ではなかったのですが、手話の先生が広報の内容を手話で教えているということにびっくりしました。
その他にも入院中の他の患者さんから「このワクチンは私みたいな大人には効果がないんかい?」という感じで質問があったりと広報のパワーに少しびっくりさせられました。
案外読んでないんじゃないかと思ったのですが結構目にしている人がいるという現実にびっくりしました。もっともっと色々な活動に利用できそうな気がしました。

シニアレジデントミーティングと研究

昨日と一昨日は東京でシニアレジデントミーティングがありました。
その中の一つのセッションで研究に関するものがありました。実は家庭医療学会の専門医認定の条件の一つに研究についての項目があります。シニアレジデントに研究を求めるのですからかなり高度ですね。
今までは信頼性の高い論文、RCTやmeta-analysisについてどうやって読むのかということを中心に教わってきましたが、RCTの向こう側ということを教わりました。
例に出たのはスピロノラクトンについての論文、RALES trialでしたが、この論文では心不全の患者の総死亡率をかなり下げることが記載されています。NNTが9ですからべらぼうに良いわけです。
ということでこの論文、当時のGPの先生方がこの論文を読むとスピロノラクトンを出さないほうが馬鹿だっていう感じになってしまうわけですね。ということでバンバンスピロノラクトンが出されたわけです。
ところがRALES後にスピロノラクトンを出された人のコホート研究をやってみると実は大変なことになっていたという話です。今現在スピロノラクトンが乱発されていないことを踏まえると大変なことというのが何かというのは察しがつくとは思いますね。
講師の先生いわく、研究を始めるということはRCTを踏まえてEBMにのっとって臨床をした場合に予期した結果通りにならないと思ったところから研究が始まるということを強調していました。
RCTはあくまで理想的な患者、理想的な環境で行われるので実際の現場での真のアウトカムが臨床の現場でどのように変化したか、現実世界でも同じ効果が認められるか、臨床現場でのアウトカムの関連はどうかということが問題になるわけです。
そういったRCTと臨床現場の橋渡しをする研究をT2 research(理想的な環境から現実世界へ、アウトカム研究、プロセス研究)といいます。その中でも先にあげた様なRCTの真のアウトカムがどのように変化したかを扱ったものをT2のOutcome研究と言います。RCTの結果を受けて現実の診療のプロセスがどう変化したか、現実の臨床医が実施可能かを扱ったものをT2のprocess研究といいます。先にT2からお話しましたがT1は何かというと基礎研究から臨床研究への橋渡しをT1 resesarch(コホート研究、症例対照研究)といいます。
いずれにしろRCTはあくまで理想的な患者、理想的な環境で行うわけで、実際の臨床はcomplianceの悪い患者がいっぱいいます。むしろcomplianceが悪い人が対照とも言えるような医療が地域医療だったりします。
へき地や地域の中核病で行う研究としては理想的な患者ばかりでないことが研究の始まりや強みだったりするのかもしれません。いずれにしろEvidenceを知らないと診療をしていても真のアウトカムが現実の臨床でどの様に変化したかが分からないので、研究課題を見つけるには普段から如何にEBMを実践しているかどうかが大事になるわけですね。
もっともっと頑張って、RCTを読んで臨床現場に結果を反映していく。今の自分にはまだまだ遠い話です。頑張れオレ、、、という感じですか、、、。
今週は水曜日の当直と日曜は日当直です、、、当直のない世界に行きたいと本気で思う今日この頃です。

2010年5月2日日曜日

プレべナー(PCV-7)の効果についてメタアナリシスを読む

今回は前回で紹介したとおりメタアナリシスを3分で読む方法に沿って読むことにします。
今回の文献はEfficacy of pneumococcal vaccination in children younger than 24 months: a meta-analysis. Pavia M, Bianco A, Nobile CG, Marinelli P, Angelillo IF.Pediatrics. 2009 Jun;123(6):e1103-10.です。

1妥当か

・メタアナリシスの課題は明確か?

PECOは?
P 月齢24か月未満の乳幼児
E 肺炎球菌結合型ワクチン(7価,9価,11価)を接種
 (月齢12カ月未満で3回もしくは4回の初回免疫接種)
C プラセボを接種、または他のワクチンを接種
O 侵襲性の肺炎球菌感染症(細菌性髄膜炎,菌血症,血液培養陽性の肺炎)、急性中耳炎、肺炎
Primary Outcomeは的確か?
的確である

・情報収集は系統的で網羅的か?

検索方法は?
論文検索は2000年1月から2008年の6月までの出版物から電子データベース(MedlineとEmbaseを用いて行った。未検出の論文を見つけるため電子データベースで検出された臨床試験や総説に関連する論文について手動の検索も行った。
英語論文以外は?非出版物は?
英語論文のみに限られている
手動の検索を行ったとあるが非出版物まで検索を行ったかどうかは不明である
・論文の採用基準、評価方法は適切か?
論文の採用基準はRCT(ランダム化比較試験)か? ITT(Intention To Treat)解析か?
採用論文はRCTである。Intention To Treat解析またはPer Protcol解析である
Reviewerは独立しているか?
2人のReviewerが独立してそれぞれの論文の質を評価しA jadad et al Scoreで評価している。最終的には2のReviewerがお互いの評価について話し合い、各々で評価に違いがあったものについては2人の総意を以てScoreを修正している。評価の段階では選択バイアスを防ぐため論文を除外することは避けた。

2何か

・結果の表はブログに画像でアップしますので興味ある方は参考にしてください!右の画像をクリックすると見れます
IPD(InvasivePneumonia Disease)については7価のワクチンを打った場合、7価によるものはRR:0.11,NNT:395、全ての血清型によるものではRR:0.26,NNT:379であった。95%信頼区間で考えると効果がない時でも7価によるものは73%イベントが減り、全ての血清型によるものでは54%イベントが減る。相対指標および絶対指標とも非常に有効な値であるしIPDによる高い死亡率を踏まえるとさらにその有効性が高く評価できる。
Otitisについては7価のワクチンを打った場合、7価によるものはRR:0.45,NNT:1799、全ての血清型によるものではRR:0.71、NNT:7であった。しかし全ての血清型に関してはPP解析のデータしかなく接種群とコントロール群の母集団数に差がありすぎてるので信頼性に足るものかどうかは疑問である。Otitisに関する全てのエピソード(実際には耳痛、熱発、耳漏などのエピソードで受診するわけだからこちらの方が臨床的には重要だろう)ではITT解析のデータがあるがRR:0.94で95%信頼区間で考えると最も効果がある場合で9%イベントを減らし、悪い場合だと4%しかイベントを減らさない。つまり7価のOtitisに関しては少しばかりは効果があるが、全ての血清型に対する効果は不明でありOtitisのエピソードに関しては効果若干はあるものの極少ないものと解釈していいだろう。
Pneumoniaに関しては7価と9価がごちゃ混ぜになった結果しかないのでごちゃ混ぜバイアスが入っている。ITT解析のデータがありRR:0.94,NNT:391とNNTに関してはワクチンとしてはそこそこ良好な値であるが、イベントをそのもの自体は大して減らさず95%信頼区間で考えると効果がない場合では2%イベントが減るのみである。Pneumoniaに関してはOtitisよりも更に少ない効果であると評価して良いだろう。

3役立つか

IPDに関してはその高い死亡率(WHO統計では全世界で100万人の乳幼児が死亡)などからしてもPCV-7は有効であると考えられる。日本での原価を約8000円として合計4回で32000円でこの効果ならコスト的にも良いと思われる。
Otitisに関しては7価のものでは若干の効果があり(論文中ではmodestと書いてある)、Pneumoniaに関してはOtitisよりも更に僅かな効果であると評価していいだろう。原著論文の結末ではOtitisとPneumoniaとも効果はさほどではないが乳幼児がこれらに罹患した場合の負担を考えると、実は潜在的に大きな意味があるのではないかと締めくくっている。あとは副反応だがこの論文中には副反応についての記載は含まれていない、日本国内における臨床試験では局所発赤などの副反応は多くみられたがアナフィラキシーなどの死亡に直結するようなものは認められていない(海外では報告あり)。
結論としてはコスト面や副反応やを踏まえてもIPDをここまで減らしてくれるのであればPCV-7を乳幼児に接種するメリットはかなり大きいと思われる。

2010年5月1日土曜日

メタアナリシスの読み方

先日、、、といってもこのブログが出来てすぐなので数ヶ月前になってしまいますがメタアナリシスを読んでみたいという風に書きました。
私が初期研修医のころに習った資料を簡単まとめてみましたので以下に載せてみます。

メタ分析とシステマティックレビュー
・メタ分析(分析の分析、1つにまとめて解析、定量的な指標に統合[オッズ比])
・システマティックレビュー(プロセスがEvidence Base、結果が統合されているかどうかは問わない)
メタ分析の問題点
・出版バイアス・・・悪い結果は出版されにくい
・評価者バイアス ・・・評価者の主観、誤り
・元論文バイアス ・・・元論文がランダム化、ITT解析でない
・ごちゃ混ぜバイアス ・・・異質なものを一緒にするとわけがわからない
歩きながら読む方法(3つの批判的吟味)
1.研究方法は妥当か?
2.結果は何か?
3.患者に役立つか?

1妥当か?

・メタ分析の課題は明確か
 論文のPECOは何か
 メタ分析の一次アウトカムは何か

・情報収集は系統的かつ網羅的か
 情報源は、検索法は?
 非英語論文は、未出版データは?

・論文の採用基準、評価法は妥当か
 治療の場合、ランダム化比較試験かどうか
 複数のReviewerが独立して評価しているか

2何か?

・研究仮説に沿って読む
・さまざまな指標で評価する
 相対指標 : 相対危険(Relative Risk:RR)
 絶対指標 : 治療必要数(Number Needed to Treat:NNT)
・確率的なものとして読む :95%信頼区間
・実数で評価する :治療群でのイベント率、プラセボ群のイベントなしの率

3役立つか?

1. 論文の患者と目の前の患者は結果が適用できないほど異なっていないか?  
 論文の患者と自分の患者を比較する
2. 臨床上重要なすべてのアウトカムが評価されたか?
 他のOutcomeをみる!
3. コストや害(副作用)を上回る効果が期待できるか?

最後:自分自身が提供した医療を批判的吟味する
・患者から十分な情報収集をしたか
・必要十分な診察を行ったか
・疑問点について能率的に勉強したか
・十分な情報提供をしたか
・自分の方針を押し付けていないか
・方針決定を患者任せにしていないか 第三者や患者の評価を受けたか

次回はこれにそってメタアナリシスを実際に読んでみます