2010年5月10日月曜日

シニアレジデントミーティングと研究

昨日と一昨日は東京でシニアレジデントミーティングがありました。
その中の一つのセッションで研究に関するものがありました。実は家庭医療学会の専門医認定の条件の一つに研究についての項目があります。シニアレジデントに研究を求めるのですからかなり高度ですね。
今までは信頼性の高い論文、RCTやmeta-analysisについてどうやって読むのかということを中心に教わってきましたが、RCTの向こう側ということを教わりました。
例に出たのはスピロノラクトンについての論文、RALES trialでしたが、この論文では心不全の患者の総死亡率をかなり下げることが記載されています。NNTが9ですからべらぼうに良いわけです。
ということでこの論文、当時のGPの先生方がこの論文を読むとスピロノラクトンを出さないほうが馬鹿だっていう感じになってしまうわけですね。ということでバンバンスピロノラクトンが出されたわけです。
ところがRALES後にスピロノラクトンを出された人のコホート研究をやってみると実は大変なことになっていたという話です。今現在スピロノラクトンが乱発されていないことを踏まえると大変なことというのが何かというのは察しがつくとは思いますね。
講師の先生いわく、研究を始めるということはRCTを踏まえてEBMにのっとって臨床をした場合に予期した結果通りにならないと思ったところから研究が始まるということを強調していました。
RCTはあくまで理想的な患者、理想的な環境で行われるので実際の現場での真のアウトカムが臨床の現場でどのように変化したか、現実世界でも同じ効果が認められるか、臨床現場でのアウトカムの関連はどうかということが問題になるわけです。
そういったRCTと臨床現場の橋渡しをする研究をT2 research(理想的な環境から現実世界へ、アウトカム研究、プロセス研究)といいます。その中でも先にあげた様なRCTの真のアウトカムがどのように変化したかを扱ったものをT2のOutcome研究と言います。RCTの結果を受けて現実の診療のプロセスがどう変化したか、現実の臨床医が実施可能かを扱ったものをT2のprocess研究といいます。先にT2からお話しましたがT1は何かというと基礎研究から臨床研究への橋渡しをT1 resesarch(コホート研究、症例対照研究)といいます。
いずれにしろRCTはあくまで理想的な患者、理想的な環境で行うわけで、実際の臨床はcomplianceの悪い患者がいっぱいいます。むしろcomplianceが悪い人が対照とも言えるような医療が地域医療だったりします。
へき地や地域の中核病で行う研究としては理想的な患者ばかりでないことが研究の始まりや強みだったりするのかもしれません。いずれにしろEvidenceを知らないと診療をしていても真のアウトカムが現実の臨床でどの様に変化したかが分からないので、研究課題を見つけるには普段から如何にEBMを実践しているかどうかが大事になるわけですね。
もっともっと頑張って、RCTを読んで臨床現場に結果を反映していく。今の自分にはまだまだ遠い話です。頑張れオレ、、、という感じですか、、、。
今週は水曜日の当直と日曜は日当直です、、、当直のない世界に行きたいと本気で思う今日この頃です。

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